2007年09月29日

交差する時間 - 恋

ひとを好きになることが
「そのひと」を不幸にすることもある
と、大人のひとが言った。
微笑みの陰に
そのひとの戸惑いが見えた。

彼は訝しんだ。
そんなことはありません
好きになってから 
僕は幸せです。
怖い位 幸せです。

仕様のないひとね
と、大人のひとが言った。
苦笑の陰に
そのひとの憐れむ心が見えた。

彼は驚いた。
そして 己の幼い心を恥じた。
好きになったことで
貴女は不幸だったんですね。
僕は不幸になるんですね。

悲しさが 心に落ちた。

posted by vino at 13:15| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月23日

交差する時間 - 雨の日

雨の日には
合羽を着て
ゴム長靴を履く
すると
雨と仲良しになれる
フードを打つ雨粒が
耳元で プチプチ
おしゃべりをする

風が吹く
風は 合羽を膨らませて
フワフワ 身体を
揺すってくる
晴れた日より
自分が大きくなった 気分

水溜りが出来る
ピチャンピチャン
水溜りを踏んで
歩いて行く
晴れた日より
自分が軽くなった 気分

雨の日には
合羽を着て
ゴム長靴を履く
すると
雨のお蔭で
晴れた日より
自分が強くなった 気分
posted by vino at 10:41| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月20日

交差する時間 - 光 U

光に出会った最初の日
人が 光に問わずにいる間
光は その人の傍らに佇んでいた
光は その人の戦きを知っていた

何故 光るのですか?

光の優しさを知らずに
幼い問いで良かったはずが
無視された戸惑いに
光は 次々に満ち溢れ来て
次々に 遠くへ去った

何故 急ぐのですか?

光の孤独を知らずに
幼い問いで良かったはずが
置いてきぼりのその人は
以来 秒速30万KMの
後姿ばかり
追いかけている
posted by vino at 17:47| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月19日

スケッチ帳

 白いままのスケッチ帳が、何冊も溜まった。
 スケッチ行には足が遠のいているのに、画材店に行くと、あれこれ手にして左見右見した挙句、つい買い求めてしまう。金を払う段になって、店員にこちらの苦笑を見咎められ、慌てたりする。視線に戸惑い、たじろぐ。
 その瞬間、自分の心の底根のところで、小さな自虐的な性向に気付かされる。

 重ねられたスケッチ帳は、無言のまま静かに横たわっていると見えるのは錯覚で、白いままの無聊を託つかに、しきりにざわついているのが聞えてくる。
 今日求めた、大きさも形も別々の三冊を、それらに更に重ね置く。さして重くもないはずなのに、「さて、如何したものだろうか」と自らに問いかけながら、思わず溜息をつく。

 描きたい風景は、至るところに散在する、と仲間の一人が言った。
 何でもかんでも描き込みたがるその人の屈託のなさに腹を立て、腹を立てた自分に嫌気が差して久しい。
 その人の言葉に、こちらの心象風景をも木っ端微塵にされた思いがした。
 見た風景が、心に投影されなければ筆は動かない、と応えたのを憶えている。
 風景は、だから、描く対象から外された。と同時に、風景からは描くことを拒絶された。

 重ねられたスケッチ帳の数だけ月日が経ち、心の扉もスケッチ帳も、閉じられたままでいる。
posted by vino at 20:36| Comment(2) | もの・がたり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月16日

不思議2題

 
DSC03492.JPG 買い物から帰ってきて、ヒョイと気付いたら、アマガエルが車のバンパーの凹みにしがみついている。
 スーパーの駐車場で乗り移ったとも思えない。とすると、往復6キロほどの道のりを、買い物のお供に付いていったらしい。よくぞご無事で。
(翌日の朝方に見たら、まだおいでになりましたが、昼過ぎには、何処かへ姿を消しておりました。)
 
不思議.jpg 散歩の道すがら、歩道で目に付いた木の実。珍しい姿形に見上げると、槙の大木。何れが実の本体なのか分かりません。赤いほうが木に付いている部分でした。青い部分は、緑とも青とも、何とも言えない美しい色をしています。
posted by vino at 17:37| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月12日

交差する時間 - 光

君の頭は?
光は黙ってる

君の尻尾は?
黙ってる光

そんなに急いで
何処から来たの?
光は黙ってる

そんなに急いで
何処さか行くの?
黙ってる光

君とは遊べんのかな?
光は一寸たじろいだ
posted by vino at 13:33| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月11日

七 草

 あの暑さは何処へ行ってしまったのだろうか。
 蝉の声に代わって、草叢では虫の音が高い。
 小庭の植え込みでは、ススキが穂を出し始め、フジバカマの蕾も膨らんでいる。ナデシコは随分早くから咲きそろっている。目を上げれば、ウメモドキの実が赤らんできている。
 暑い寒いは、どうやら人間様の我侭にすぎず、季節は静かに、そして確かに移って行く。

 何故なのだろうか、春の七草は、「セリ、ナズナ、ゴギョウ・・・」と、すらすら言えるのに、秋の七草はトンと浮かんでこない。山野草図鑑に当たって、やっと七つを数えることが出来た。
 で、歴史の暗記の語呂合せではないけれど、夫々の頭文字を繋げたら面白い文句が浮かんだので、お披露目。

【秋の七草】・・・好きなお服は?・・・
・好き=ススキ、キキョウ。な=ナデシコ。お=オミナエシ。服=フジバカマ、クズ。は=ハギ。

 ついでのことに、    
【春の七草】・・・仏は鈴鈴御経なせり・・・
・仏=ホトケノザ。は=ハコベラ。鈴=スズナ、スズシロ。御経=ゴギョウ。な=ナズナ。せり=セリ。

 もっとも、何を何に当てたのかを忘れてしまっては元の木阿弥、却って面倒なことになってしまうか知らん。

 予報によれば、向う一週間は、前線の影響で、雨天、曇天続きとか。
 今日は、新月。どうやら月のお出ましに合せて、お天気も回復するらしい。 
 季節の、粋な計らいと言うべきか。
 
 宮下富実夫の‘turning point’(BIWA RECORDS)をエンドレスで聴いている。
posted by vino at 17:19| Comment(2) | 独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月09日

交差する時間 - 塀

内と外と言っても詮無いことですが
内に居れば外に憧れ
外に居れば内に焦れ
いっそのことと
中程に塀を建てましたら不思議なもんです
内と外とが流体となって
お互いに塀を乗越え合うと
やがて一体となってしまいました

とばかり思っていましたら
ハタと気付きました
もともと
内と外などある筈のないものに
右往左往していたのでした

内なるも外なるも
己の意識そのものであるのでした

とばかり思っていましたら
やっと気付きました
内とばかり外とばかり思っていましたので
何とか生きてこられたのでした
弱いものです
考えずに来ましたから
あっちへウロウロこっちへヨロヨロでした

塀はそのままです
恐くて近付けません

とばかり思っていましたら
塀は墓標になることに気付きました

これで良いのでしょうか
これで良いのでしょう

繋がれてあるものに
内も外もありません

真っ当
<あそこ>へ向かうばかりです
posted by vino at 13:08| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月08日

もう一人の女性

 昨日の続き。で、もう一人の女性のこと。
 十割蕎麦の看板につられて駐車スペースに車を乗り入れると、頭に手ぬぐいを巻いた、作務衣姿の若い主が出迎えてくれた。とは、当方の錯覚で、開店時間が来たので商いの看板を「営業中」にひっくり返すために、偶々店先に出て来たのらしい。11時28分。
「少し早いですが、構いません、どうぞ。」と愛想よく招じ入れてくれる。訊けば、開店は11時半とか。
 蕎麦屋には時分時に入る気がしない。いつも、開店直後か2時過ぎか、時間をずらして入る。
 通された座敷に座って蕎麦茶を飲みながら、「ざる」の出来るのを待っていると、先程の店主がチョコチョコとやってきて、出窓に置かれたオーディオセットのスイッチを入れた。流れてきたのが、ジョン・レノンの‘Imagine’。歌手の名を訊くと、「確か、スズキシゲコだったかな。自分で好きな曲を編集して作ったCDなので、原盤がないからはっきり・・・、いや、鈴木重子です、そうです。」
 文章を読み解くように、歌も歌い解くということが事実ある。確かにある。
 ビートルズナンバーは色々聴くけれど、これが痺れてしまいました。聞き惚れていて、お陰で、蕎麦の味は分からず仕舞い。出来秋の蕎麦を期待します。
 帰途、早速オーディオ店に寄ってゲット。
 12曲目が、‘The Rose’。Bette Midlerとは、それはそれは、曲が違うかと思うくらいに違う。この人の特徴だけれど、豊かなハスキーヴォイスで、静かに語る。
 エンドレスで聴いている‘Imagine’、今何回目の演奏になるのだろうか。

SHIGEKO SUZUKI ‘Just Beside You’(BMG)
 
鈴木重子IMG.jpg   


posted by vino at 15:50| Comment(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月07日

三人の女性

 
林洋子IMG.jpg タイトルにして振りかざすほどの意味があるわけではない。偶々、この2、3日の間に知り得た女性が、三人であるに過ぎない。
 その一人、林 洋子さん。
 1980年に、クランボンの会を設立し、宮澤賢治の作品の一人語り出前公演を開始。以来、1460回の公演を重ね、総観客数は31万人に達しようとしている。
 1994年、「幼児にも涙してその世界に没入するほどの感動を人々に与えた」功により、宮沢賢治学会及び花巻市より第4回イーハトーブ賞受賞。(以上、「林 洋子ひとり語りー宮沢賢治 2007年11月3日公演案内パンフレット」より)
 この林さん、俳優座養成所第一期の卒業生で、今年、喜寿を迎えられるとのこと。
 女優としての道は、決して順風満帆とは言えず、「苦海浄土」の巡礼公演以後、或る出来事によって芝居が出来なくなってしまった。この件は、NHKCDセレクション・ラジオ深夜便「めぐり逢ういのち」に詳しい。
「幼児にも涙して・・・」とは、琵琶の弾き語りによる「雁の童子」のことらしい。上記のCDにも、そのサワリが紹介されている。
 11月3日の記念公演、何はさて置いても聴きに行かねばと、今から待ち遠しい。
 お二人目は、味戸ケイコさん。
 数々の絵本の挿絵で著名な方だから、ご存知の方も多いのではなかろうか。
 何処か、朦朧体を思わせる、登場するものが光に溶け込むようなタッチで描く人で、単なるメルヘンの世界とも異なり、文章作家の思いを、深い奥底で受け止めて絵を表出させる。
 当方は、松谷みよ子・文『わたしのいもうと』(偕成社)で拝見したのだけれど、その他、安房直子さんなど、日本を代表する童話作家との仕事を数多く発表されている。
 そして三人目は、月谷初子さん。
 市立図書館では、毎月、月替わりにテーマを設定して、特設コーナーが設けられ、関連図書が展示される。9月は、「月」。
 そこで見つけたのが、『月の炎』女流陶芸の先駆・月谷初子(桑原恭子著・風媒社)
 まだ読み始めたばかりなので、月谷さんの人となりの紹介は出来ないけれど、著者の言によると、日本で最初の女流陶芸家とのこと。明治2年の生まれだから、川上貞奴、上村松園、平塚らいてうなどと重なる。 
 陶彫による作品も数多く紹介されているが、当方がいたく気に入ったのは、「楽茶碗」と「李朝写し茶碗」の2点。
 作者が、掌の中で大事に大事に育てたような温かみを感じさせる。修行時代、男装までして打ち込んだ熱情も秘められていて、いずれも凛として美しい。その佇まいは、女性の手になるから優しく美しいなどという感傷を拒み、本物の姿形を見せてくれる。
 本を手にして、これらの作品を目にしなかったら、そのまま書架に戻してしまったかも知れない、それ程、人を魅きつけずには置かないものを感じた。
posted by vino at 17:42| Comment(2) | 独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする