2008年12月31日

交差する時間 - 夢

その肌えに触れた だけの 手が
そのものの中に 次第に 溶解して行って
同時に夢が消えた
きっと僕は夢の底で
僕を象徴する ひとつの 消点を 
連想したに違いない

遠視になった僕が
掴み損ねた近くのものを
置いてきぼりにしたまま
目覚めた
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2008年12月27日

交差する時間 - 手袋

握手をする手には志がある

唄の聞こえる街中で
僕はひとつの黄色い手袋を落とした
僕がその中にいた間
僕は何となく居心地が悪く
指を折っては日数を数え
日に何度も人と握手をして
黄色い顔で笑っていた

手袋はいま五本の指で
何処を歩いているか
posted by vino at 17:42| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月22日

交差する時間 - 補色

赤は緑 緑は赤
青は橙 橙は青
黄色は紫 紫は黄色

仄かに浮かぶ白は黒
紛れたままの黒は白

思い出のそれはセピア色
それとも透明

透過する光が濾過されて
順色のままでいる
posted by vino at 19:26| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月15日

残影(断想)

 僕の不幸は、僕の頭の中にアナタが住んで以来です。でも、それは、勿論アナタの所為ではありません、断じてありません。と同時に、僕の所為でもありません。誰と言って、それは運命の出会いとしか言いようがないのですから。そして、僕にはアナタがそのことに全く関知しないということが不幸なのではありません。意識の外にあることをまで詮索するほど、僕は傲慢でも小心でもない心算です。
 僕の不幸は、ホンの少しの関心と、大いなる無視とを、アナタの表情に見たことです。
 しかし、今更、出会わなければ良かったなどと嘆いても詮無いことです。そんなことよりも、僕が思うのは、アナタを通り越して、いや、アナタを通して、何ものが、僕に一体何を伝えたかったのかを知りたい、ということです。
 僕たちのあの出会いは、決して偶然ではなかった、いや、どんな出会いでさえ、必然の成り行きの結果であると、僕には思えるからです。
 何故なら、僕らの存在そのものが、偶然といえば偶然であり、必然といえば必然であるなどという二律並列的なものではなくて、「ありうべくしてあるものに過ぎない」というのが、僕の結論だからです。 
 従って、僕の不幸は、決して出会いに始まったのではなく、僕というものの中に既に存在していたものが、アナタとの出会いによって薄皮を剥がされた、もっと言えば、暴かれた、というべきなのです。
 アナタの、「ホンの少しの関心」と「大いなる無視」は、ですから、その瞬間の引き金の役目を担ったに過ぎません。
 しかし、それは、引き金であると同時に弾丸となって僕の胸に突き刺さったほどに、劇的であったことは事実です。むしろ、僕の不幸は、僕を貫通してなお飛び続けているその弾丸の、痛みを実感させないかに見えるほどの間断のない、呆気ない無情さにあるのかも知れません。
 何ものも共有し得ないまま過ぎた時間の痕跡のように・・・。
 出会いに無条件の有情を求めた幼さを笑って下さい。
 僕の不幸は、僕の頭の中にアナタが住みつく以前のものです。
 アナタではない何ものかの残影を見るのは、僕の悲しさです。
posted by vino at 17:14| Comment(0) | 掌編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月08日

メトロノーム(断想) U

 海の底に潜む間、貝殻は貝であった
 ある夜明け
 波の唄に誘われて
 風の囁きに魅せられて
 汀に自らを開いた

 汀に馴染んだ分だけ時は過ぎ
 波と風と砂に
 自らを審らかにしないまま時が過ぎ
 貝は少しずつ貝殻となり

「先生、メトロノームが停まってますね」
「いいの、もういいの。何かが終ると、次のことが始まるまで、空っぽね、まるで空っぽ」

 窓台に置かれたメトロノームは、音もなく鎮まっていました。その傍らに、貝殻が一つ、陽射しの中で淡いピンク色に染まっていました。

S.E. メトロノーム・GRAVEで
M. B.G.MレベルからやがてF.O.

 白いレースのカーテンが、風を孕んで揺れていました。

 ・・・波と風と砂に落とした肉体を
    貝殻は惚けたまま見ている・・・

S.E. メトロノーム・GRAVEで、止むまで
posted by vino at 09:45| Comment(0) | 掌編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月06日

交差する時間 - 銀杏


DSCF2873.JPG

銀杏の葉の音のして降る
銀杏の実は既になく
銀杏の木の眠りにつく、今

林の中に降り敷く落ち葉に
陽は潤沢に輝いて
親木は更に身をふるう

身を結ぶ歓びの時は去り
葉を落とす今は涙の溢る

銀杏の葉の音のして降る
posted by vino at 12:50| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月02日

和楽器アンサンブル風趣公演


IMG.jpg

「お聞き下さって、いかがだったでしょうか?」

 ひたちなか市にお住まいで、公演活動ばかりではなく音楽の指導員・講師としても幅広くご活躍の、筝曲の演奏家、大須賀佳緒里さんのコンサートに行ってきた。
 実は、琴の演奏はおろか、和楽器の演奏には縁遠い身だったのだが、新聞の案内記事で、「中原中也の詩によせて」という文言が目に付いたので、大須賀さんに直接お電話してチケットを分けて頂いた。
<プログラム>
1.五つの小品〜錦木によせて〜より
      “藍玉”(長澤 勝俊 作曲)  
 十七絃  大須賀 佳緒里
 十三絃  鈴木 英子
 詩の朗読 村上 長子
「サーカス」「月夜のボタン」
2.風三章(吉崎 克彦 作曲)
 一章(薫風の舞)
 二章(白南風)
 三章(野分)
 
 十三絃  大須賀佳緒里
 三絃   鈴木 英子
 詩の朗読 村上 長子
      「早春の風」「昏睡」「骨」
3.氷華二題(吉崎 克彦 作曲)
 (一)彩氷(さいひょう)DIAMOND DUST
(二)氷河(ひょうが)

 十三絃  大須賀佳緒里
 十三絃  鈴木 英子
 詩の朗読 村上 長子
      「雪の賦」「汚れっちまった悲しみに」
4.海鳴り(石井 由希子 作曲)
 十七絃  大須賀佳緒里
 三絃   鈴木 英子
 詩の朗読 村上 長子
      「北の海」
 演奏の間に、大須賀さんの中也に対する思いや夫々の詩の解説が入る。
 中で感動したのは、2.風三章の二章(白南風)での、十三絃と三絃の早弾きの二重奏。メロディーも美しい。そして、3.氷華二題(二)氷河での、十三絃二面による演奏。あちらがそう弾けばこちらはこう弾く、こうならそう、とばかりの熱演。琴の奏でる音色の奥深さにウットリ、ビックリ。

「中也の沢山の詩の中から、演奏する曲に合わせて選ぶのに悩みました。苦しい時も悩む時も、いつも寄り添ってくれていた中也の詩だっただけに、果たしてこれでよかったのかと不安でした」
 演奏が終って一言ご挨拶を、と思ったけれど、沢山のファンの方がどっと押し寄せて、おじさんは退散。 で、先ほど、ご本人からご挨拶の電話を頂いて、汗をかきながら、感想を申し上げたところです。
 大須賀さん、終った後のお客さんの拍手の大きさが全てを物語っています。

「・・・さんの朗読の会に、お伺いします」
 えーっ!!美人には弱いんだよなあ。(とニヤニヤ・・・)
 会場の「アトリエ浅田」(那珂市)は、オーナーの浅田さんが素晴しいホームページをお持ちですので是非ご覧下さい。     
posted by vino at 16:48| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする