2012年08月27日

交差する時間 - 時の流れ

女は
わたし、今まで自分でも聞いたことのない
声を出していた
みたい
と言って、少し笑った
 
 砂丘を風が這って行った
 丘から窪みに
 わずかな水の流れが浸みた

女は
わたし、今まで自分でも分かっていなかった
引き出しが
自分の中にあるなんて
怖い
と言って、少し泣いた

 草原を風が割って行った
 一本の大木の枝で
 風が鳴った

女は
自分から流れ出た星を見送りながら
待って
と言って、少し微笑んだ


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2012年08月20日

ずっこけている

 先日、義兄の祝賀会に呼ばれて行ってきた。
 主は、60年近く、空手道に勉めてきた人で、周りの推薦もあって春の叙勲で「旭日単光章」を受章したそのお祝い。
 先輩、同輩、後輩と一門の門人が集い、和やかで賑やかな、いい祝賀会だった。
 宴会のお開きに、縁者の一人として謝辞を述べるようにいわれていたものの、空手道については門外漢なので、考えあぐねた末にロンドンオリンピックにかこつけてメダリストのコメントやらアスリートの熱い心やらに触れ、結びに、吉野弘の「祝婚歌」を朗読した。
 当然、お酒も入っていたので、宴席はざわついていたけれど、一行目で、場内がシーンと鎮まってくれた。結婚式ではないので、タイトルは読まずに一行目をタイトルとさせてもらった。
 底本は、『二人が睦まじくいるためには』(田中和雄編・童話社)。

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい

 後日、姉から電話があって、「あの詩は心に沁みた、誰の詩か詳しく教えて欲しい」と、当日の参列者から問い合わせが沢山きている、コピーを送ってほしい、と言ってきた。
 詩に寄せた茨木のり子さんの賛辞にある。
< ・・・現代詩がひとびとに記憶され、愛され、現実に使われるということは、めったにあるものではない。ましてその詩が一級品であるというのは、きわめて稀な例である。>

 当ブログの「検索ワード」には、毎日のように「祝婚歌」が記録されている。
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2012年08月05日

犬の責任?

犬の責任?.jpg

 朝晩、犬の散歩に行く源氏川の堤防には、アンツーカーの遊歩道が整備されており、定期的に草刈りの手入れもされて気持ちよく歩くことが出来る。下水道が普及しつつある陰で、水の流れも昔のように清流と言っていいほどきれいになった。
 犬を連れて散歩をする人も多く、こちらも、いろいろな犬種、飼い主のファッションを楽しみながら歩いている。
 ところが、愛犬が夏草の茂みに鼻をつけるのには注意しなければならない。犬のお土産をそのままにしていってしまう飼い主がいて、草刈りが済んだあとだと、なおさら目に付くようになる。
 ただ顔をしかめてばかりでは能がないので、一計を案じて標識を立てることにした。A4判の2分の一の大きさのシールにプリントアウトして、両端に割り箸をつけて、件の場所に立てる。「源氏川をきれいにする会有志」としたけれど、今のところ会員は当方ひとり。きのうから始めて、すでに4本を立てた。今朝の散歩では、新しい置き土産は見当たらなかったから、効果があったのか知らん。嫌味なおじさんだと思われても、いいや、今の世の中、誰かが憎まれ役を買ってでも行動を起こさないと、止め処がなくなる傾向があるから、しばらく続けてみようと思う。
posted by vino at 17:59| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月02日

ヤマユリ(断想)

P7251368.JPG

 ヤマユリの花は好きだけれど、その匂いが苦手だ、と言う人がいる。バラなどの、芳香を放つ花に比べると、はるかに濃厚な甘く饐えた匂いが鼻にまとわりつく。

「あら、頭にユリの花粉がついてる」
「気づかなかった。匂いがきついとは思ったけれど、君の匂いかなと思っていた」

 ヤマユリの花は好きだけれど、その雄蕊のつけた禍々しい色合いの花粉が苦手だ、と言う人がいる。
 
「ユリの花粉て、つけちゃうと洗ってもなかなか落ちないのよ。雄蕊、摘んでおくんだったわ」

 ヤマユリの花は好きだけれど、雌蕊の先端の、ぬめり気を帯びた様が苦手だ、と言う人がいる。

「ユリの花ってさ、どこか物欲しげな気味合いを感じるね」
「わたしを見ながら言わないで・・・」

 ヤマユリの花は好きとも嫌いとも言わずに、ヤマユリの根の甘煮は好きだ、と言う人がいる。そんな人は、きっと、ヤマユリの花の妖艶さに酔うのかも知れない。それを言うのは、なんとなく気鬱だと隠して。
posted by vino at 19:25| Comment(0) | 庭には・・・ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする