2016年11月20日

「二冊の本」後日

 例によって、乱読、併読のこと。

『前 途』(庄野潤三、講談社)

 本棚の並べ替えをしているときに、床に積んで仮置きしていた本が崩れて一冊の本が飛び出てきた。庄野潤三の『前途』だった。昨年の6月に、「二冊の本」というタイトルで、野呂邦暢の『夕暮れの緑の光』を紹介したときにも触れたけれど、昭和17年から18年にかけての著者の九大での生活を中心につづられた作品で、詩人伊東静雄との師弟関係や学友、校友との青春の交流を描いたもの。
 時局はますますひっ迫しており、アッツ島での日本軍の玉砕などにも言及するが、著者独特の淡々とした筆致は踊るところがない。
 ところどころ拾い読みをして片づけるつもりだったけれど、庄野氏の筆力に引きずり込まれて、一気に通読してしまった。
 『夕暮れの〜』中にも引かれている、
 前途程遠し思ひを鴈山のゆふべの雲に馳せ、
 後会期遥かなり纓を鴻臚のあかつきの涙にうるほす (『和漢朗詠集』)
には、様々な思いが溢れる。この詩句にある、『前途』も『夕べの雲』も庄野さんの作品名にあり、当方にとっては青春の譜であった。

・・・今度は海軍航空予備学生が任官後、六ヵ月の命である。その期間中に殆どの者が戦死する。七〇%が死ぬということを小高が昨日、聞いてきたと話す。・・・
・・・帰る時、小高が、「もうお目にかかれないと思いますが、お世話になりっぱなしで」と云ってお辞儀をしたが、日野先生もちょっと辛そうだった。・・・

 折しも、南スーダンへ赴いた若き自衛隊諸氏の安寧を祈らずにはいられない。
posted by vino at 15:35| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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