2014年11月09日

肥後守 豆

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 愛用の肥後守は、刃渡り7センチほどのもの。青紙割込だから、切れ味は申し分ない。
 変な言い方になるけれど、切れる刃物は切れ過ぎないその程がよい。だから鉛筆でも思うように削ることができる。
 その肥後守に弟分ができた。
 刃渡り4センチだから、およそ半分の大きさ。小さいながら造りは全く同じで、やはり青紙割込。真鍮製の鞘にスッポリと納まる。刃身と鞘を結ぶ軸のリベットの大きさが、兄貴分のものと同じサイズなのはご愛嬌。なにか昆虫の目玉のように見える。
 色鉛筆用にと手に入れたのだけれど、かみさんのペンシル型の眉墨を研ぐのに丁度いいと、横取りされてしまった。2、3色研がなければならないらしく、適当な刃物を探していたのだとか。
 同じ色鉛筆だ、ま。いいか。
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2014年06月16日

蚊遣り

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 蚊遣火の煙の末をながめけり 日野 草城

 蚊遣の「やり」は、追い払うの意という。
 松や杉の青葉や干した蓬をいぶす蚊遣火は、都会ではまず考えられない。地方の農家でさえ、刈り草を空き地や畔で燃やすことはあっても、蚊遣目的で火を焚くことはなくなった。
 最近は、スプレー式や電気で薬剤を蒸発させるものなどが出回っているけれど、煙の見えないのが物足りない。
 その点、蚊取り線香は簡便で、毎年夏には欠かさずに調法している。なんと言っても煙の立つのが良い。
 
 煙の流れは風の流れ、時の流れ。その行く末を見るともなしに目が追っている。その細い煙に乗って流れ行く想いは小さくない。
 
 去年の一夏、愛用していた陶器製の豚君は、身を焼かれて脆くなったか、秋口に片付ける際に二つに割れてしまった。
 だから、「父の日に」孫娘が贈ってくれたスチール製の蚊遣器が、今年の夏の友。
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2014年01月17日

気懐(きなつかし)の気分

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 ピンクでなく橙色でもない。その中間の色で、幼い頃に、母が手縫いの和服地の色目で教えてくれたのが鴇色。あの絶滅種の鴇の羽根の色という。
 セピア色も好きな色だけれど、もっと温かく、奥深く、どこかに艶な雰囲気を宿している鴇色。布地であれ器物であれ、その色を目にすると、鼻の奥がむず痒くなるような郷愁を覚える。
 雑貨店のガラスの器が並んだ棚に埃をかぶっていた。両側面対角に筋が見えるから、型押しの稚拙な造りだけれど、小腰をかがめたように歪んだその姿が面白く、手にした。
 店内の照明にかざすと、とろけるような甘酸っぱい匂いが漂った。
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2012年10月04日

黒電話機

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(風の電話ボックスの)中には、黒いダイアル式の電話機と白い椅子。
 でも、不思議です。
 その電話機は、どこにもつながってはいません。

 600-A2型。ボディに割れはないけれど、あちこちに擦過傷。店の棚に埃まみれで転がされていた。
 どんな会話をつないだのだろうか。喜び、怒り、慰め、笑い、涙、懇願、感謝、祈り、時候の挨拶、取引の連絡、無言・・・。

「おじさん、これいくら?」
「XX円」
「おじさん、気持ちおまけして。ボランティアの仕事で使いたいんだ」
「おれぁ、ボランテアじゃねえや・・しようがねえな、△△円でいいや」

 買い物の道すがら、よく冷やかしに寄る、骨董屋というよりも、その免許の看板に書いてあるとおり古物商と言ったほうがいいような、ガラクタであふれかえっている店。前から、黒電話機の400型を探してもらっていたのだけれど、「なかなか出ねえなあ、これだっていつなくなるかわからねえよ」と言われて、とりあえず押さえに、と買って帰った。
 600型は、ダイアルのリングが樹脂製なのが残念。400型だと、真鍮の型抜きで、使い込むうちに黒い塗装がこすられて落ち、番号の穴ごとに真鍮色が見えてくる。ダイアルがもどる時の、ジーコ、ジーコ、シコッ、という音も、電話機の息遣いのように聞こえる。金属の加工品には、どんなに小さなものにでも手仕事の全うさが感じられるのがいい。
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2011年12月03日

かくてなむ・・・

DSC06874 (450x410).jpg なんとも情けない「もの・がたり」にはなってしまった。三度目の正直とはよく言ったもので、手帳の中身が粉々になって洗濯機の脱水ドラムに張り付いている。
「なに、これ!?」
(あー、またやってしまった。しかも今回は、絶望的だ〜)
 
「洗濯物を出すときは、ポケットの中身をよく点検してちょうだい。」と、洗濯のたびに、家人に小言を言われている。
 この手帳も、今までに二度、ズボンのポケットに入れたまま洗濯してしまった。
 帰宅するとすぐに浴室に直行するので、作業着を洗濯するのは、いつの間にか当方の役割になっている。二度とも、洗い終えて洗濯機から取り出すまで気づかずにいたけれど、そのままポケットの中に残っていたので、ばらばらにならずに済んだ。が、今回はいけなかった。ビニール製の表紙と厚紙の中表紙を除いて細切れになってしまった。
(どうしよう、あのメモ、日付や数字や誰かさんの住所や電話番号。約束はなんだったかな・・・。)
途方にくれてももう遅い。
 おまけに、一緒に洗ったジャンパーのポケットからは、な、なんと!! USBメモリーまで出てきたではないか!南無さん・・・一瞬目を瞑った。
 もう、これ以上は、ト、ホ、ホでございます。
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2011年08月31日

もの・がたり - テーブルベル

ベル.jpg イタリアン雑貨のtrentaさんで見つけた、テーブルベル。 先ごろ、イタリアの骨董市で買い付けをしたMさんが店のおじさんから聞いた話では、50〜60年代のものらしいという。しかし、当方にとっては、ヴィンテージものかどうかはあまり関心がない。古色付けで似せて作られたものでも、持って楽しければそれでいいという主義だからだ。でも、実際にイタリアの家庭で使われたものだったら、と空想が膨らまないわけではないけれど。
 真鍮製で、トップには猫が尻尾をピンと立てて頑張っている。Φ68、H135だから、いわゆる掌サイズ。 
 お話し会を始めるときに使う、何か格好なベルはないものかと探していたところだったので、早速手に入れた。単行本2、3冊分の値段だ。
 猫の尻尾をペンハンドに持ち、お腹のところに薬指をかけて手首で振る。澄んだチャーミングな音色が嬉しい。
 さあ、お話出て来い・・・。
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2010年12月28日

もの・がたり - ガラスの小瓶2

「そんな小瓶、どうするの?」
「何にするの?」
 見る人ごとに訊かれるので往生してしまう。
 この、得も言えぬ小さな形象の中に大いなるものを見なくてどうするね、と開き直っても多勢に無勢、形勢はおもわしくない。
 こんなところで、宮沢賢治を引き合いに出しては、牽強付会との叱正の声が聞こえそうだけれど、賢治にしては、何とも小気味の良い台詞なので、引かせて頂く。

 あんまり訳がわからないな、ものと云ふものはそんなに何でもかでも何かにしなけゃいけないもんぢゃないんだよ。そんなことおれよりおまへたちがもっとよくわかってさうなもんぢゃないか。

 これは、「サガレンと八月」という小品の中に出てくる言葉です。農林学校の助手の「おれ」がサガレン(樺太)へ行って、海岸で貝を拾います。円い小さな孔があいている小さな白い貝です。それを、砂浜に打ち寄せる波の声に揶揄されたと思い、言い返すのです。
 今や世を挙げて、整理整頓をしろ、片づけろ、ものを捨てろ等々、にぎやかなこと。その手のハウツー本がベストセラーだというから気がしれない。
 ものを愛で、ものと語らい、ものから教えてもらう喜びをどうして捨ててしまうのだろうか。ものが多かろうが少なかろうが、ものを楽しめない人は心の貧しい人に違いない、などと書くと、大向こうからひんしゅくを買いそうで気が引けるけれど・・・。

DSC06797.JPG 先日、「ガラスの小瓶」の中で、茶色の小瓶が無性に欲しいと書いたら、これが手に入ったんですね〜。
 24日、大阪のCountry KAJIという雑貨店から、「茶色の小瓶1個入手しました。どうしますか?」とメールが届いた。お店が忙しい中をあちこち探してくれたらしい。
 一も二もなく返信して、クリスマス・プレゼントとしては間に合わなかったものの、今日、無事手元に届いたという次第。
 さっそく、青、緑、透明そして茶色と4色並べてみましたら、これがいいんですね〜。思った通り、茶色のものが入った途端、他の瓶の姿勢が良くなって、4色仲良く、机の上に整列しています。
 
 それで良いのです。一日に何べんも、八角形のガラスの蓋を、カシャ、コシャと開け閉めしている、それだけで良いのです。それで随分、心豊かでいられます。
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2010年12月22日

もの・がたり - ガラスの小瓶

「こちらを向いててください」と、優しく手を添えて首の向きを直された。
 
 歯医者さんの治療器具は、何と言うのだろうか、あのキーンという回転音のするものはもちろん、ピンセットだって見ることが出来ない。それらが口の中に入ってきてアレコレするのを思っただけで、縮みあがってしまう。だから、治療の間はきつく目をつぶることになる。もっとも、口を大きく開けて、おまけに目まで開いて下から先生を見たりしては、いくら綺麗な女性歯科医とはいえ、失礼になるという遠慮がないでもない。

小瓶.JPG それなのに、器具をそろえて置く小さなテーブルの上のこれらの小瓶が気になって仕方がない。窓からの光を通して、青、緑、茶そして透明と、4色に輝くガラスの小瓶たち。時々、先生が、小瓶たちのガラスの蓋を開け閉めするときの、カシャッとかコシャッとか聞こえる音も気になる。
 で、治療の隙を盗んでは横目に小瓶たちの方へ目をやるのだけれど、その都度、「よそ見をしてはだめよ」とばかりに、直される。
 何を入れて置く小瓶なのだろうか。先生や看護師さんたちは、特に興味を覚える様子もなく、至って無造作に扱っている。

「茶色の小瓶が揃いませんが、よろしいでしょうか?」
 先日、ネット・ショップで、「歯医者さんが使うガラスの小瓶」を手に入れた。高さ5.5センチ、胴体2.5センチ角の小瓶たち。残念ながら青、緑、クリアの3色のみ。無い物ねだりとはよく言ったもので、並べてみても、何となくしまらない。無性に、腹立たしい程、茶色の小瓶が欲しくなる。
 行きつけの歯科医院のあの先生にリクエストしてみようか、などと埒もないことを考えているけれど、こんなときに限って、歯は痛くも痒くもない。
 困った・・・。
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2010年12月15日

もの・がたり - ペン型はさみ

 それほど頻繁ではないけれど、出先で、いま手元にあったらいいのになあ、と思うものの一つがハサミだ。
 時間つぶしに買った新聞や週刊誌にちょっと気になる記事があったとき。
 シャツの袖口の小ボタンの糸がほつれて、糸尻が垂れているのに気づいたとき。
 小指に絡まって縺れた「赤い糸」を切るとき。などなど。
 
DSC06775.JPG 先日、ホームセンターの文房具コーナーで見つけたのが、「ペン型はさみ」。
 刃の部分をたたんでキャップをすると、1p角程の太さのスマートなペン型になる。
 普通のハサミは、指を入れる持ち手の部分が異様に大きく出来ていて、携帯するには嵩張るし、机の引き出しや筆立ての中でも大威張りで耳を張る。
 このペン型は、スライダーというつまみを動かすと、ループ状のハンドルが左右輪になって出てくる。
 驚いたのは、そのループが左利き用、右利き用と使い分けられるようになっていることで、左利きの人には有難い仕組みに違いない。

DSC06777.JPG 製品の説明書きに、「左右両利き手で使える構造のため両側に刃がついています。」とある。
 つまり、開き勝手によって、刃の背中の部分が内側に来るようになる、というわけだ。
 5人の孫のうち、2人が左利きで、普段、ハサミ使いに戸惑ったりしているのを見ているので、クリスマス・プレゼントの包装を開けるために、この優れものを一緒に忍ばせて贈ろうと思っている。
※「株式会社 レイメイ藤井」製。税込504円也。
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2010年11月20日

もの・がたり - キャニスター

 
キャニスター.JPG ふたを開けると、入れ子になっていて、もう一つ、へえー、まだある。都合三つ揃いのキャニスター。
 薄い鉄板に、白ペンキを焼き付け塗装しただけのこの手のものは、本来の用途には使い辛い。第一、ふたの納まりが悪く、機密性に乏しい。コーヒー豆なんかは入れられない。
 だから、胴体のロゴを見なかったら、買わなかっただろうと思う。一番大きなものの、‘Cafē.’は当然として、二つ目のものには、‘Thē.’、そして三つ目のものには‘Scure.’とそれぞれ印字されている。そうか、ちゃんと神経使ってるんだ、だったら安物とはいえ、これって洒落じゃない? と合点したのでした。
 当分は、紅茶や砂糖を入れたりせずに、三つ子のキャニスターを、それぞれのロゴを確かめながら出したり入れたりして遊べそう。
 






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2010年11月16日

No.700 もの・がたり - ハサミ

 行きつけのスーパーのチラシに、「出張・刃物研ぎます」とあったので、愛用のハサミを頼むことにした。もう20年近く使っている、小ぶりなもの。
「理美容ものは預からないんだけどなあ」
「僕、プロじゃありません」
「でも、これ、プロ用のハサミだよね」
「えー、結構高かったです」
「んー、そうでもないなあ、中級品かな、よく見て。今の若い理容師や美容師は、自分で道具の手入れをしない、面倒くさがって。専門のルートで頼むと結構高いもんだからさ、ものによっては1万円前後するから、オレンとこへ持ち込むのよ。だから、わざと理美容師用の研ぎ道具は持ち歩かないの、断れるように」
「じゃ、駄目?」
「そうだなあ、いたずらはしていない(自分で研いだりしていない)ようだから・・・、ちょっと時間かかるよ」
「いいです、いいです、お願いします。で、おいくらでした?」
「そこに書いてある、ハサミ一丁1000円」
「じゃ後ほど」
 3時間後、研ぎあがったハサミを受け取りに行くと、研ぎ師のおじさん、わき目もふらずに作業をしている。
 箱形のトラックに道具がびっしり積んであって、客からの預りものの、包丁やハサミのほかに、鎌や剪定バサミ、農機具の唐鍬まである。
 家に帰ってから、カミさんの頭の白髪を1本失敬して、切れ味を試してみた。
 スパッとは音はしなかったけれど、持ち込む前とは数段違う、見事な切れ味が戻っている。
 あすの朝、口髭を整えるのが楽しみになった。

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2010年11月07日

もの・がたり - ブロッター

DSC06656.JPG 以前は、万年筆ばかりではなく、インク壺、Gペンをよく使った。カリカリと音をさせながら紙を引っ掻くように書いて行く。その時、吸い取り紙が必需品だった。かまぼこを寸詰まりに切ったような器具の円弧のところに挟んで取りつけ、インクの文字に軽く押しつける。
 ついぞその器具の名前を意識しないままでいて、いつの間にか使わない時代になった。
 
「ブロッター付き」
 WEB散策でよく立ち寄る、イタリア雑貨店TRENTAさんで見つけたペンセット。
 木軸のペンと緑に近い青いインクの小瓶が一本、それに、件の吸い取り紙・器、ブロッターが付いている。親指と人差し指二本でつまむと指の陰に隠れてしまいそうなくらい小さいけれど、つまみ金具は真鍮製、本体は楢のような堅木、と小さなものでも神経が行き届いた作りになっているのがうれしい。

 さて、どんな心模様を書くか。その前に、青い便せんをさがさなければならない。
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2010年10月10日

もの・がたり - ワードプロセッサ

 長らく倉庫に押し込んでおいたままになっていたワープロが、再び日の目を見ることになった。
 福島で、ワープロの修理を生業にしている人のいることを友人から聞いて、連絡してみると、快く引き受けてくれるという。「着払いで」と言ってくれたけれど、なんだかトツガセル気分もあって、元払いで送った。
 パソコン全盛の時代になっても、修理をしながら使っている何が何でもワープロ派がいて、修理待ちのワープロが600台、来年の春まで予約でいっぱいだとも聞いた。
 
 機械や道具は、手に馴染んだころに傷んだりこわれたりしはじめ、「直すより買い換えた方がお得ですよ」という不埒な風潮もあって、忸怩たる思いもあっただけに、ほっとしている。まだまだ動いていて立派に仕事で使っていたものだけれど、万が一不都合があってそのままでは使用不能だとしても、分解修理を生業とする方の元にあれば、部品なりとも再利用されて役に立つこともあるだろうと思うと嬉しくなる。

 ぽっかり空いた倉庫の棚には、先代のP.C.が所在無げに眠っている。
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2010年07月29日

「自然石」

 よく行くホームセンターのアート&クラフトコーナーでスケッチブックを買う。


DSC06218.JPG 「自然石 詰め放題」というキャッチコピーにつられて、小さなビニール袋にギュウギュウ詰め込んだ。
「もっと、袋を広げるように押し込むのよ」と家人は言うけれど、そこまでは出来ない。最後に、隙間に小さな粒を一つ押し込んで袋を閉じた。30センチ立方ほどの木箱には沢山の青い石が輝いている。
 まだまだ欲しいけれど、もう一袋もう一袋と際限なく欲しくなりそうで、こう言ったものは一袋で我慢することにする。
 レジに持って行って、「これ、何の石?」と訊ねると、若い女子店員が一瞬、怪訝そうな顔をしてからニッコリ微笑んで、「これはガラスです。自然石に似せて作ったものです」。「!?」
「自然石」というのは、加工の呼び名、アイテムの一つで、早く言えば、自然石風のもの。よく見るとそこはガラス製品のコーナー、とある。
 
 帰宅してから、釈然としない気持ちのまま眺めていると、どれでもいい、とりあえず一つ割って自分の眼で確かめたくなってくる。
 しかし、いざとなると、どれ一つとして半作なものはなく、大きさも色も模様もそれはそれで充足している完全なものたちと納得させられてしまう。
 
DSC06217.JPG 果たして、自然石に求めたものは何だったのか、ガラスと知らされて腑に落ちたものは何だったのか。
 半可通なりに、「自然石」を眺めながら考えている。
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2010年07月15日

もの・がたり - 青い器

 家人の主治医が桜川市にある公立病院に移られて1年が過ぎた。先生の顔を見て、世間話をしてそれだけでもいいと、片道50キロ、1時間半の道のりを月一回のペースで通っている。当初、月曜日の外来受診だったけれど、せっかく笠間市を経由して行き来するのに、日動画廊も陶芸美術館も休みではつまらないので、水曜日にかえてもらった。お陰で、企画展や常設展を見たり、沿道に並ぶ陶器店やギャラリーを冷やかしたりする機会が増えた。
 診察を終えて笠間に着くのが11時半前後になるので、そば屋に入るにはちょうど良い時間になる。
 行きつけは、陶芸美術館近くの「柊」。この店を見つけたのは去年の暮れで、店内の品書きにあった“猪肉けんちん”を食べて以来必ず寄ることにしている。(このそば屋のことは後日)
 
DSC06142.JPG 腹ごなしに何軒かのギャラリーをのぞいて、青い器を見つけた。ひとつは、五弁の花を思わせる小鉢。「食事のとき、これにラッキョウの塩漬けをくれる?」「何粒?」「そうだな、三、いや五粒」
 よく見ると、青い水の流れの模様の中に、天女が小首を傾げてほほ笑んでいる。
※ 径8p


DSC06145.JPG 何の変哲もない、色土を捏ね上げて作られた小さな楊枝入れ。色も気に入ったけれど、猪口にもならないこんな小さなものを作る陶工の姿が思い浮かんで、つい。
※ 径3.5p
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2009年10月29日

サザエさんを飲む


DSC05395.JPG「これ何でしょうね、蕎麦猪口?」
「でしょうね、でも良いし、お猪口でも良いし、ご夫婦ご一緒にお茶を飲んでも。何しろサザエさんですからね」
「あぁ、慌てん坊ってこと?だから如何様にも使って良いと」

 東町通りの骨董屋さんで見つけた、サザエさんとマスオさん。
 珍しく、マスオさんが悠々と寛いでいる側で、サザエさんが何か一言言いたげな面持ち。吹き出しの台詞がない分、あれこれふたりの会話を想像してニヤニヤしている。心持、マスオさんが小さく見えますが。

 今、常陸太田市の商店会が、「スロータウン鯨ケ丘 十五夜〜十三夜 秋の収穫祭り」を開催している。
 その地形から、古来、鯨ケ丘と呼ばれる旧市街地は、昔の賑いは疾うに遠のき、いずこも同じシャッター通りになりつつある。
 さしてはならじ、と商店会が知恵を絞って売り出しを行い、「鯨」と染め抜いた幟を立てた商店では、本来の商いの他に古民具、昔の写真、時代物の資料などを展示している。文化7年(1810年)築といわれる町家も、現役の書店として頑張っている。
 10月3日が旧暦の8月15日で十五夜、30日が同じく9月13日で十三夜、そして11月1日が9月15日で十五夜。題して「和暦の時間が流れる街」。
 間もなく秋の新蕎麦も出来ますれば、「いぢど、きてみだらいがっぺ!(一度、お出でになってみてください)」。

 今夜は、サザエさんの愚痴とマスオさんの言い訳に耳を傾けながら、一酌。
 アレッ、マスオさんの足、舐めちゃった!!
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2009年09月15日

オーヴァーホール

 たかだかビス4本を外せば済む作業なのに、オーヴァーホールは大げさな物言いだけれど、使い始めて以来4年間、手入れせずにいたコーヒーミルの分解掃除をした。
 同じ豆を使っているはずなのに、このところコーヒーの味が少し違ってきたように感じていた。
 ドリップで淹れるには粗すぎるとは思っていたのだけれど、豆を挽く調節ネジが固くなって動かずにいたのをそのままにして使い続けていた、そのせいらしい。
 分解してみて驚いた。さして複雑な仕組みではないのに、どこに貯まっていたものやら、本体を逆さまにして振ったところ、出てくる出てくる、優に1回分、10gほどのコーヒーの粉が出てきた。
 豆を挽く心臓部を取り出して水洗いをし、組み立てなおしてハンドルを回してみたら、軽い、軽い。使い始めた時の感触に戻っている。
 このコーヒーミルを買った時は嬉しかったなぁ、と思い出しながら、昔の記事(「コーヒーミル見ーつけた!」)を読み返したら、完全に舞い上がっている。
 その時はブログ初心者で、写真をアップ出来なかったので、改めて御披露します。
 
DSC05211.JPG ちなみに、そのプロポーションは、
・身長:25p
・バスト:(受け口)7.5p
・ウェスト:3.5p
・ヒップ(ミル部):7p
・体重:4.7kg

 末永く使い続けて行くには、手入れが肝心と納得したことでした。
※写真はクリック拡大100%でご覧下さい。
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2009年06月17日

青いインク壷(詩想)


DSC04834.JPG 青いインク壷は、自在に自由に光源の荒みを操って、「静か」でいる
造型のままに受け入れ、何ものも望まず、何ものも拒まず、「静か」でいる
青いインク壷は、時を経て疵を得たが、褪せることなく構わずに、青のままでいる
青いインク壷は、透いたまま深く色を織り成し、寡黙のまま、「静か」でいる
青いインク壷の物語りに耳を澄ませば、自ずから観照の境地が生れる
青いインク壷と遊ぶには、心静かであればよい

※このほど、アンティークギャラリー堅香子さんから求めた、青いインク壷。小さな買い物だったけれど、望外の喜びを得た。
堅香子さんへは、サイドバーの「鏡花水月紀」からお入り下さい。きっと良い出会いがありますよ。
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2009年05月18日

もの・がたり - 器


一輪挿し.JPG

 千円単位の雑器の釉薬の具合を云々するのはおこがましい限りだけれど、良いものは良い、というか好きなものは好き。
 織部様のものは、魯山人の器を含めて余り好きではない。釉薬の力に負けているか、形に逃げているかのどちらかで、陶器の諂いが勝ってしまうように思えてしまうのだ。(これ、好き嫌いの話)。
 桜川市に所用の帰り、笠間の陶器店を冷やかして見つけたのが、この一輪挿し。高さ8p、胴径7.5cm。
 首のところに釉薬の溜りが見えて、群青色がかっている、この色具合が何とも言えない。店の主は「徳利にするんですか?」と訝っていたが、構うことはない。一度、酒を入れて使ってみて、具合が悪ければ季節の花を活けるまでのこと。
posted by vino at 19:51| Comment(0) | もの・がたり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月19日

スケッチ帳

 白いままのスケッチ帳が、何冊も溜まった。
 スケッチ行には足が遠のいているのに、画材店に行くと、あれこれ手にして左見右見した挙句、つい買い求めてしまう。金を払う段になって、店員にこちらの苦笑を見咎められ、慌てたりする。視線に戸惑い、たじろぐ。
 その瞬間、自分の心の底根のところで、小さな自虐的な性向に気付かされる。

 重ねられたスケッチ帳は、無言のまま静かに横たわっていると見えるのは錯覚で、白いままの無聊を託つかに、しきりにざわついているのが聞えてくる。
 今日求めた、大きさも形も別々の三冊を、それらに更に重ね置く。さして重くもないはずなのに、「さて、如何したものだろうか」と自らに問いかけながら、思わず溜息をつく。

 描きたい風景は、至るところに散在する、と仲間の一人が言った。
 何でもかんでも描き込みたがるその人の屈託のなさに腹を立て、腹を立てた自分に嫌気が差して久しい。
 その人の言葉に、こちらの心象風景をも木っ端微塵にされた思いがした。
 見た風景が、心に投影されなければ筆は動かない、と応えたのを憶えている。
 風景は、だから、描く対象から外された。と同時に、風景からは描くことを拒絶された。

 重ねられたスケッチ帳の数だけ月日が経ち、心の扉もスケッチ帳も、閉じられたままでいる。
posted by vino at 20:36| Comment(2) | もの・がたり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする