2011年07月25日

そうなんだぁ、とか

「そうなんだぁ」と、彼女は言った。

 小学生のための、夏休みのドリル教材を訪問販売しているのだという。
「うちには、小学生はいません」
「そうなんだぁ、以前△△さんから照会をもらったようなんです」
「△△は娘です。県外に住んでます」
「そうなんだぁ。で、どちらに?」
「あなたに教えなくちゃいけないの?」
「あ、いえ、評判をいただいている教材なので、お孫さんとかにいかがでしょうか?」
と、なかなか根性がある。
 首から名札を下げているけれど、胸に抱えるようにしているファイルの陰で見えない。ジーパンにスニ―カー、白いポロシャツ姿。なでしこジャパンの誰かさんのように、こんがりと日焼けしている。大学生のアルバイトなのだろうか。
「おじいちゃんからのプレゼントにいかがですか?お支払いのほうは×××」
「そうなんだぁ。でも、子どもたちは子どもたちのほうで、塾とかいろいろやっているようだし、教材のほうは結構です」
<そうなんだぁ>、<とか>、<・・・のほう>とか、 彼女の口調がすっかり移ってしまった。
 彼女は、まだ説明を続けたそうに玄関口に立っている。しまいには、「年配の方のボケ防止には小学生レベルの教材が最適ですよ」と言われかねないので、灯りのついている隣家を指差して、「あの家には小学生がいるはずだがなぁ」と言うと、「そうなんだぁ。あ、ありがとうございましたぁ。さっそく行ってみます」
 <そうなんだぁ>のおねえさんは、元気よく帰って行った。
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2011年06月24日

盗らないで

 書店で、お気に入りの作家の新刊本を探そうと、作家別のコーナーへ行ったところ、妙齢のご婦人が立ち読みをしている。付かず離れずの距離を保ってうろうろしていると、そのご婦人が、突然大きな欠伸をした。美味しそうに空気を吸って、小さく声を出す。つられて、こちらも小さく欠伸をしてしまう。欠伸って伝染するものなんですね。と、彼女は咎めるような目つきでこちらをちらっと見て、今度は、びっくりするくらい大きなくしゃみをした。あんな大きなくしゃみをしたら、当方は途端にぎっくり腰になってしまうと思うくらい。
 びっくりしたからか、こちらは、くしゃみは続けずに済んだ。くしゃみまでしていたら、何と言われるか。「わたしを、盗る気!?」、とでも。
 あぁ、くしゃみの前のあの目つきは、くしゃみをする時の堪えようのない一連の衝動が見せた、彼女の素なのかもしれない。それが証拠に、ハンカチを口にあてたまま、彼女は、少しはにかんだように小さく会釈をして、その場を離れて行った。邪険な人じゃないんだ・・・。ブルガリの何だったか、かすかに香水の香りが残った。
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2011年05月20日

脱アナログ

「随分レトロなスタイルですね」
( 携帯電話に、レトロという言い方はそぐわないぞなもし )
5年間、使い慣れた携帯電話の機種を換えた。当方が携帯電話を取り出すごとに、歴史的文物をでも見るように、特にお若いのになぶられたものだ。それでも意地で使い続けてきたけれど、充電用電池が、予備のものともパンパンに膨れ上がって、ポケットの中でさえ本体から飛び出す始末。

 ドコモショップで新しいものにデータをコピーしてもらい、大まか、使い方のレクチャーを受けた。当初、カチンときた女子社員のタメグチも、説明が進むにつれて気にならなくなってしまう。若い女性と話をするのは楽しいものだ。なにしろ今度の機種は、ワンセグものですからね。
光のぶどう.JPG データの確認をしていると、マイピクチャーに思いがけない画像が残っていた。< 光のブドウ >。

「今度のは、1、320万画素ですからこれよりはるかに画像はよくなります」と、念を押された。手持ちのデジカメを凌ぐ解像機能に、恐れ入りました。


「では、今までのものは、処分ということで・・・」
「ハイ、お願いします」
 彼女が取り出したのは、ケイタイパンチなる代物。前の携帯電話をセットして、プスプスと穴を開け始めた。Oh,my God!
( 帰ったら、「取扱説明書」と首っ引きだ。) 

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2011年04月18日

ミミガタテンナンショウ

ミミガタテンナンショウ.JPG いつもの散歩道を逸れて、地元でお守りしている神社の境内へと山道を行く。参道の両側はうっそうとした杉林、枯れ落ちた杉の実が参道を一面に覆っている。
 花粉症の季節もやっと終息してくれた。

「花粉症は、全部セーフです。ハウスダストも反応は陰性です」
「でも先生、くしゃみ、鼻水、おまけに全身症状もありまして・・・」
「反応が陰性の人でも、たまに症状の出る人がいます。そういう人も含めて花粉症です。花粉病ではないんです」
「!?」
 以来、花粉症の薬を服み続けているお陰もあって、杉の木のさわやかな芳薫を胸一杯に吸い込むことができる。
 鳥居の足下に、木漏れ日を受けて独特の仏炎苞を明るませているミミガタテンナンショウ(耳型天南星)を見つけた。そうと分かってはいても、見れば見るほど不思議な花の姿と思うのはこちらの勝手で、花にとっては何事もなくこれこそ己が姿と定めた自然の摂理を教えられる。
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2011年03月02日

三寸ばかりなる人〜かぐや姫

 
竹取物語.jpg とうもろこし人形の母こと、とうもろこし人形作家の木村拓子さんから、人形展の案内をいただいた。
 今まで何回か作品展を拝見させていただいたけれど、一体でも複数の人形群でも、木村さんはご自分のものがたりを人形とともに語ってこられたように思う。人形の造化の見事さは、同時に、木村さんのものがたりの確かさ、懐の深さであり、その前に立てば、おのずと人形の数だけ会話が生まれ、感情の揺らぎがあった。
 さて今回は、「竹取物語」を、80体に近い人形群で読み解かれるという。
 古典に拠ることは、造形作家にとってはある意味とても勇気の要ることだったはずで、まさに木村さんの腕の見せ所、ものがたり作家の聞かせどころとなる。(もっとも、木村さんは肩肘張ったもの言いをされる方ではないし、何より、「人形を見て、感じて、楽しんでもらうのが一番」と常々おっしゃっていられるから、余計な勘ぐりはなしで、表現されたままをゆっくり楽しませていただくつもり。)
 知っているようで、朧にかすんでいる記憶の中のかぐや姫ではなく、「もしかして、『竹取物語』って・・・」という、木村さんの「竹取物語を」聞きに行く。

展示期間:3月4日(金)〜9日(水)
場  所:ひたちなか市笹野町
     ギャラリー「エスパース」
     029-276-3323

※ 作品展のパンフレットは、木村さんのホームページ、「木村拓子のとうもろこし人形」(右側サイドバーでリンク)でご覧ください。PDFで、すばらしいものがご覧になれます。
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2010年12月21日

あれ?

 大安吉日。ある晴れた日。
 いつも買い物に行き来する道路に面して建つ祭儀場の駐車場に、紅白の幕が張られている。
「あれ、これってなあに?」と、思わず車を露地に乗り入れて家人と考えてしまった。
「天寿を全うした人の・・・」
「だけど、紅白の幕まではなあ・・」などと言い合っているところへ、制服を着た式場の係の男性が幕の様子をアレコレ手直し始めた。
「付かぬことを伺いますが・・・」と、おずおず訊ねると、その人はニッコリ笑って教えてくれた。
「今から、< お人形供養祭 >を執り行います。」
 子供が無事成長したことを見届けてくれた人形、訳ありの人形、こもごも、祭儀場の会員も一般のものも、この際全部まとめて面倒みます。祭壇前にずらりと並べて僧侶がお経を挙げ、人形の御霊を抜いて供養したのち、お焚きあげ(人形の火葬)を行う、とのこと。
 確かに、人形をそのままごみ袋に入れて捨てるのも気が引けるし、かと言って、押し入れや天袋の奥深くや倉庫のうす暗い所に閉じ込めておくのも罪深い。思い出が深い程、どうしたものか、その処分に迷うものらしく、例年、山のように集まるという。
「欠かすことの出来ない、大切な年中行事になりました。」と、係員はさわやかな顔で言った。
 そう言えば、市内でも祭儀場があちこちに増えたから、大変なんだろうなあ。
 でもねえ、郵便ポストに営業案内のチラシを入れるのはなあ、そこまでやるか?と思わないでもないですよ。
 
 そのせいだろうか、あの日の紅白の幕が異様に印象に残っている。  
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2010年12月04日

陶展“駄駄男と林檎”を観る


DSC06749.JPG 笠間市に窯を構える陶芸家の小林征児さんは、先年、トルコを訪れてカッパドキアの空の青さに魅せられた。そのとき、ホテルの窓から見た < あおい林檎 > の実にインスピレーションを得て帰国し、程なく河野裕子の歌に接して脳天を射ぬかれた、と言う。得も言えぬ懐かしさを覚えながら土に触れるうち、数々の青いオブジェが生まれた。

  
DSC06761.JPG 禁断の果実である林檎、青春の日の思い出を詠う林檎、幼い日の母の面影と重なる林檎。
「赤」、「白」に続いて、「青」のシリーズを手掛けた陶芸家は、今回はじめて、そのオブジェ群に名前を付け、具象的な形を与えた。曰く、“駄駄男と林檎”。 
“駄駄男”とは、文字通り、駄目な男、駄々っ子につながると本人は言うけれど、駄駄はダダであり、具象化されたはずの林檎は、緑を通り越してシュールな青となり、唇を持ち、艶めく果肉を露わして観る者を欺く。

於:アカデミア・プラトニカ(那珂市飯田)029-295-5050
  〜12月 7日
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2010年11月10日

爆 発


ガスカートリッジ.JPG ボワーッ!!!と大音響が起こり、ガチャガチャーンとガラスの割れる音。あたりには粉じんが立ち込め、瞬間、何が起こったのか分からずに呆然としてしまった。右の耳が爆風でキーンと耳鳴りをしている。見回すと、床には、引きちぎれたガスのカートリッジの残骸、粉々になったコーヒーのドリップセットのガラスの破片などが散らばっている。ストーブから立ち上がる部分の煙突がペチャンコになっている。
 えーっ、そんな〜。
 人生には次の瞬間、何が起こるか分からない、いや何が起こってもおかしくない。瞬時にそう思った。
 
 今朝は寒かった。朝食後、いそいそと仙丈庵に入り、さっそく薪ストーブに火を付けた。いやいや違う、一番にエアコンのスイッチを入れて、まだ火の入っていないストーブの上で、いつものようにコーヒーを淹れたのだった。水は、キャンプ用の携帯ガスカートリッジで沸かす。ドリップし終わったところで、ストーブに火を付けた。当然だけれど、いつもならガスカートリッジはストーブから離れたいつもの場所に移す。そうしたつもりだった。
 
 爆発が起きた。それがすべてだった。
 幸い、ガスのカートリッジの破片やガラスの欠片が身体に当たることはなかった。ひしゃげた煙突のお陰で、家人がそれらの直撃を受けることもなかった。
 人生には、何が起こるか分からない、何が起こってもおかしくない。同時に、何かに守られていることも確かだ。
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2010年10月29日

小林征児 陶展

 
駄々男展.jpg 笠間市在住の陶芸家、小林征児さんの個展が開かれる。
 コンセプトは、“駄駄男と林檎”。駄駄男とは、小林さんがオブジェに取り組むときの、もう一人のひと。小林さんのオブジェは、赤い土から始まって、白い土となり、今回は、青い土による造形群で、モチーフは林檎と・・・。
「青い塊、まだ焼きあがっていない」とのこと。いやなに、芸術家に産みの苦しみはつきものでありますれば。



カッパドキア奇岩風景の中の林檎の印象から・・・。
幼年期「リンゴの花弁が・・・」から始まるひばり
の唄、ニュートン、マグリット、白雪姫など・・・。
そして今年、河野裕子の歌「青林檎与へしこと
を・・・」などから、何かをもらって林檎達を青い
塊に形象しました。(案内状から)


会 期 11月28日[日]→12月7日[火]
    (12月1・2日は休館日)
    開館時間 午前 11 時〜午後 6 時
場 所 アカデミア・プラトニカ
     那珂市飯田2574-17
Tel 029-295-5050
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2010年10月27日

朝 露

 
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 今朝は、冷えた。窓をあけた途端、北風にヒューッと顔をなでられて、思わず首をすくめてしまった。里山の紅葉はまだ始まっていないのに、気忙しいことだ。
 菜園に光るものがあるので出てみると、ブロッコリーの葉の上で朝露が朝陽を浴びて輝いている。さっそくカメラにおさめて、どれか一枚、と思ったけれど、選びきれずにあれもこれもになってしまった。
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2010年10月15日

レモングラス

 
レモングラス.JPG 菜園の片隅に、今年初めて植えたレモングラスが結構な株に育ってくれた。周囲の泥被りの部分は残して、中ほどの茎の太いところを刈り取った。まるで萱のような草丈だ。
 一本ずつ水洗いをして、いま陰干しをしているところ。
 レモングラスは生でもハーブ・ティーとしていける、と教えてもらったけれど、余りにも生々しいので腰が引ける。
 根元の太い所は、お風呂に入れて楽しんでもよし、料理に使ってもよし、とも聞いた。
 あとは、残した根株の冬越しを考えなければならない。来年から、菜園にハーブの種類を増やそうと計画しているのでその試金石になる。
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2010年10月11日

所かわれば

 
イッポンシメジ.JPG 山菜採り名人である知人の秋の得物はキノコ。今年初物のイッポンシメジを届けてくれた。

「物の本によると、イッポンシメジは毒キノコとあるけど?」
「確かに。でも、このキノコに当たったことは聞いたことがない。第一食べてはいちばん美味いでしょ。『匂いマツタケ味シメジ』って」
「確かに。でも東北地方では食べないって。その代わり、この辺で言う毒キノコの代表、ツキヨタケは食べるって」
「確かに。数か月塩漬けにすると毒素が消えて、この上ない美味だとか」
「これ、大丈夫?」
「じゃ、持って帰ろうか」
「いやいや、去年も食べたし、美味しかったし・・・」
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2010年09月26日

問題が問題


DSC06563.JPG 「大根三日」。これは、それほど、大根の発芽が早いことを言うらしい。なるほど、わが菜園の大根も種を播いた翌日に降った雨が恵みの雨となったか、四日目にはそろって芽を出した。
 少し厚めに播いたので、いずれ間引きをしなければならない。
 
 今朝の、読売新聞日曜版に面白い記事が載っていた。いつもは、けらえいこさんの漫画で笑わせられるのだけれど、今日は「わが家のあたしンち」の「あたしンち賞」で笑ってしまった。その一つを引用させていただく。

●娘の理科のテスト
 小学校の娘が持ち帰った理科のテスト。間違えたのは、「種を入れる前に土の中に何を入れますか?」という問題。正解は「肥料」、娘の回答は「指」。うん、確かに指入れて穴を開けるよね。(埼玉・カナママ)

 この娘さんは、家庭菜園とはいかないまでも、ベランダのプランターにお母さんと一緒に、何かの種を播いたことがあるのだろう、実体験して指に触れた土の感触が強く残ったに違いない。
 以前、東北地方のある県の小学校での、やはり理科の問題にまつわる微笑ましい話を聞いたことがある。

●雪が解けると、何になりますか?
 正解は、「水」。ある一人の女の子の回答、「春」。

 この夏休み、孫軍団の宿題をのぞいて驚いたことがある。国語に限らず、算数や理科の問題の文章が、実に回りくどい。もって回ったような言い回しで、挙句に、下線や傍線、四角の中、括弧の中、線で結べなど、記号の羅列。一読、子どもに何を答えさせたいのか分からない。クイズじゃあるまいし、もっとシンプルに、子供たちの思考回路を導いてくれるような文章が書けないのだろうか。特に、答えが思いつかないときなど、子どもの手前、「これは問題が悪い」と、呟いたりしていた。
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2010年09月09日

「カンブリア紀層」に触れる(7)


長谷町14.JPG 戻り道、ミヤマカラスアゲハの羽根が片方だけ落ちているのを見つけた。先ほど、吸水行為をしているのを見たばかりのアゲハだろうか。まさか、とは思ったけれど、往きにはなかった羽根だったもの・・・。

     


交差する時間 - 静 寂

美しきひとの ひとり逝きし
哀しさよ
芳しくも甘し花の蜜は
饐えたり
余り乳の如く饐えたり
陽は白々と降り注ぎ
音もなく降り注ぎ
何なくに時の過ぎ往く
虚しさよ

我が想い当て所なく
片羽根となりて地に墜ちぬ


長谷町22.JPG 河原で拾った片麻岩の欠片。水に濡らすと縞模様が美しく浮かび出てくる。
 手前の薄いものは、3_もない。このように薄く剥離した切片には、黒雲母がキラキラと輝いている。


 
長谷町23.JPG 往きには見過ごした層をなす岩盤に触れてみた。ここがズバリ5億年前のものかどうか定かではないけれど、限りなく近く、「5億年」が横たわっている。ここは、常陸太田市長谷町西堂平。
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「カンブリア紀層」に触れる(6)


長谷町15.JPG ゲートから800bほど上ったろうか、左手の崖部に異様な断層が現れる。まるで左右から押し合いをして突き上げた様な岩肌が露出している。どうやらこの辺がカンブリア紀層の上限らしい。



長谷町19.JPG 今まで見えていた板状に重なる地層が消えて、ごくありふれた岩盤になる。





長谷町17.JPG   
長谷町18.JPG 
それは沢筋でも同じで、大小さまざまな岩塊が転がっている。
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2010年09月07日

「カンブリア紀層」に触れる(5)

「常陸太田市史」に、この地層に関する記述があるので、長くなるけれど引用させていただく。(市史通史編上、第一編地理、第二節地質)

---阿武隈高地南端にあたるこの地域には、広く変成岩類がある。これには、阿武隈高地の西縁に沿って西堂平変成岩、玉簾(たまだれ)変成岩があり、その東方に日立変成岩がある。(略)
西堂平変成岩 阿武隈高地の西縁南部に分布する。西堂平の名は、高貫町の小字「にしどうたいら」に由来するが、広く「にしどうひら変成岩」といわれている。ここの岩石は、高度に変成した片麻岩や結晶片岩から成る。片麻岩は、黒雲母片麻岩が主で、黒雲母が集まって黒褐色(風化すると茶褐色)の部分と石英・長石が集まって白色の部分が交互に重なって縞状になっている。結晶片岩は、黒雲母片岩と角閃岩が主である。黒雲母片岩の構成鉱物は前の黒雲母片麻岩とほぼ同じであるが、より細かく配列されているので、板を重ねたようなようすをしている。これを片理と言う。(略)

 では、現場に戻ります。
 
長谷町10.JPG 山道左手崖部に露出した岩盤。沢側のように水に浸食されていないせいか、荒々しい岩肌が見える。





長谷町11.JPG 平らな板状に剥離した岩。









長谷町12.JPG ゲートから700bほど登ると、山道にも板状の岩盤が露出して来る。 








長谷町16.JPG 右手の沢に続く地層の岩盤。
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2010年09月06日

「カンブリア紀層」に触れる(4)

(調査にあたった)田切美智雄さん(日立市郷土博物館特別専門員・茨城大学名誉教授)は「日立市と常陸太田市にまたがる多賀山地から日本列島が形成されたのではないか」と推測している。(読売新聞茨城県版・10/8/19)
 
歩いていても、5億1100年前の地層という途方もない数字が思い浮かぶ。

長谷町5.JPG 歩き初めて10分足らずで、沢筋にカンブリア紀独特の地層の岩盤が現れる。板状に重なった筋目を持つ茶灰色の岩で、潜り込みとせり上がりの地殻変動を忍ばせるように斜めに傾いて層をなしている。




長谷町9.JPG 更に上流に歩を進めると、その景観は一層顕著になる。
( 写真左側が、茂宮川上流で方角は北、右側が下流で南。この地層の傾き方は、山道の上流に向かって左手の崖でも同じ形状が見られる。)




長谷町7.JPG 所どころ、早瀬となって清流が駆ける。







長谷町8.JPG 同時に、沢の水筋も細くなってくる。
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2010年08月29日

「カンブリア紀層」に触れる(3)

 山道に蝶のいることに何の不思議もないけれど、一頭の蝶がひとり、所在無げに水を吸っている姿を見ることにはある種の感慨が浮かぶ。
 彼は確かに渇きを覚えて吸水行為を繰り返したには違いない。しかし、その繰り返しの中に、彼の「所作(スタイル)」が見え隠れする。
 彼は、自然に触れたがっている。辺りの空気の中で一点にある己を見たがっている。
 彼は、メルヘンの中に翔んでいる。
 山道に、ひとりの詩人が立っている。

秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があって、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました。

陽といつても、まるで硅石か何かのやうで、
非常な個体の粉末のやうで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもゐるのでした。

さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくつきりとした
影を落としてゐるのでした。

やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもゐなかつた川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました・・・
(中原中也『在りし日の歌』より「一つのメルヘン」)
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2010年08月27日

「カンブリア紀層」に触れる(2)

 
長谷町3.JPG ゲートを潜って砕石道を進む。左手には茂宮川のせせらぎの音、右手はうっそうとした杉林で、木下闇には山アジサイの群生がほの白い花を揺らせている。道端の叢では、か細いながら目に染みるような赤い花を付けたミズヒキの群れ。赤いと言えば、マムシグサ(ミミガタテンマンショウ?)の熟した実が、道標のように点在している。


長谷町4.JPG 進むうちに川筋が右手に変わって、茂宮川の最上流部が川床を見せ始めた。左手の崖部にも、層をなした岩盤が現れる。崖から浸み出した水が道路に小さな水たまりを作っていて、メタリックな光沢のある羽根の美しいミヤマカラスアゲハ(?)が水を吸っている。
 見習ってこちらも水筒の水でのどを潤す。ゲートからは然したる傾斜道でもなく、距離もまだ1キロと歩いていないはずなのに息が上がってしまった。
 

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2010年08月23日

「カンブリア紀層」に触れる(1)

「太田のどの辺?出来たら行ってみたいな」。笠間に住む、陶芸家の小林征児さんから電話があった。
 読売新聞と地方紙の茨城新聞紙上で、「常陸太田市長谷町地内にある地層が、日本最古、およそ5億1100年前のカンブリア紀のもの」と紹介された記事を見たらしい。
 いずれ涼しくなったら案内してよ、というので、さっそくその下見に行ってきた。
 市街地を東に出外れた田圃道を北東方向に進むと長谷の宿がある。地内の狭い一本道を更に進むと、沢になった茂宮川に突き当る。

長谷町.JPG 地元の人に場所を訊いてみようと左手を見ると、砂防堰の滝つぼに人影。
「田畑の仕事で汗をかいた時は、ここに入って涼むんだ」と言って、着衣のままズブズブと滝つぼへ。辺りには民家もないから、専用貸切の天然の清涼風呂。
 


長谷町2.JPG 指差された方向へ進むと、沢に懸った橋を渡りきったところにゲートがある。車はここまで。ここから1キロ歩くか歩かないかで記事で紹介された地層の岩盤が露出している場所がある、と教えられたので、ゲートを潜って山道を歩き始める。
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