2013年03月19日

八卦よい残った

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 八卦堂が揚がり始めました。土台、礎盤、わら座の下に、揚屋工事を担当する業者さんの秘密兵器、撥ね金物を差し込み、それを八角形のうちの四面にセットしたレールで咥えます。四面に2台ずつ、計8個のジャッキでまず30cmほど揚げます。そして、そのレールの下にさらに250×250のH鋼を2本差し入れて、正面側と後ろ側に2台、15tの油圧ジャッキを使い一回につき14cmずつゆっくりと揚げてゆきます。何故14cmかと言いますと、ジャッキの架台に使う枕木が、巾23cm、厚み14cmだからです。つまり、一回揚げる毎に枕木を一枚ずつ足してゆく訳です。その繰り返しです。
 写真はおよそ120cm揚がった様子です。中にかすかに見えているのが文化財である「弘道館記碑」です。台座を含めると4m近いものですから、建家は最終的に2mまで揚げます。記碑は、養生の鋼材を含めて17t、建家は、屋根が銅板葺きで中ががらんどうですがケヤキ材が使われていますので15t強あります。
 記碑の碑身は、まるで鎧を着たように、がんじがらめに鋼材や養生材でくるまれています。従って巾が2m近くなりますから、建家を揚げただけでは外に持ち出せません。堂の中で、90度回転させなければなりません。これがまた大変な作業で、短いレールを円形に近くセットしてコロを使いながらソロソロと回転させます。これからが正念場です。
 今のところ、記碑が出てくるのが26日、大型クレーンで吊り上げ所定の作業場へ移送するのが27日の予定です。
 NHK水戸放送局などメディア関係が、その模様を取材に来るという話ですので、注目していてください。
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2013年03月05日

当たるも八卦

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 1月は「行く」、2月は「逃げる」そして3月は「去る」とか申しまして、仕事に追われる日々が続いております。好文亭の方は、2月の20日前に無事終了してホッとしたのもつかの間、現在、弘道館八卦堂の修復工事中です。と言いましても、八卦堂そのものではなく、中に鎮座している弘道館記碑を移送する工事です。3.11の震災で、この記碑が大きなダメージを受けました。
 もともと、もろい大理石(当方の地元、常陸太田産の「寒水石」が使われています)で出来ている上に、水戸の空襲でうけた火炎による傷みが激しく、碑身に深刻なひびが入っておりました。そこへあの大震災です。見るも無残に剥落、崩落してしまいました。その記碑を向こう一年かけて修復するために、仮設の作業場まで約100mほど移送します。記碑本体の傷みが激しい上に、高さ3.1m、巾1.9m、厚0.5m、重さ7t強の碑をジャッキアップして運び出します。それに伴って、八卦堂そのものを垂直に約2m上げなければなりません。いわゆる揚屋、曳き屋工事です。とにかく、相手が重要文化財ですから神経を使います。3月29日が工期です。
 偕楽園ほどではありませんが、弘道館公園にも梅林があって、白梅・紅梅が咲き始めています。
 お立ち寄りの際は、声を掛けてください。
※弘道館、八卦堂、弘道館記碑については、それぞれの項目で検索ご高覧ください。
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2013年02月07日

好文亭外改修工事(番外編)

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 現場であるあちこちの門へ行くために、一日に何度この道を通るだろうか。表門を入って好文亭へと続く道で、突き当りを左に折れ中の門をくぐると芝前門前の広場に出る。そこを右手に行くと好文亭の入口、芝前門をくぐって緩やかな階段道を下ると梅園に出る。
 両側は鬱蒼とした杉木立で木漏れ陽もあまり届かず、昼でも薄暗い。杉林の中には一年を通して美しい笹緑色のオカメザサが群生している。時々、アオジがこの道に出てきて、チッチと鳴きながら餌をついばむ姿を見ることが出来る。馴れたもので、こちらが近づいても逃げようとせず、1メートルほどでやっと四つ目垣をくぐって笹の中に飛び込んでゆく。
 清掃を担当するおばさんたちが道の両側の雑草を抜くために林に入ったり、季節によっては落ち葉を掃き寄せたりする。笹叢の中に巣を持つアオジは、そんなおばさんたちの高調子の話し声で、すっかり人馴れしているのかもしれない。
 夕暮れどき、杉木立の右手向こうに真っ赤に燃える夕焼けを見ることがある。薄暗い林を通して見るせいか、驚く程美しく妖しく燃える夕景に、立ち止まって見とれる。
 今朝の小雨が上がって、林の中の道の向こうはまばゆい春の陽射しだ。係りの人に聞くと、ひと月ほど遅れている梅の開花も、この雨で一気に進むかもしれないという。
 今年の水戸の偕楽園の観梅シーズンはまもなく始まる。(オットット、その前に修繕・改修工事を逐わさなければならない。急げ急げ・・・)
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2013年01月13日

H24好文亭外改修工事

 今年度は、ほとんど外部の仕事です。寒い寒い中での作業が続いています。
 工事項目を列挙しますと
○好文亭奥御殿屋根、一部茅葺替え
○露地門(ろじもん):柱取替え、屋根茅葺替え
○芝前門(しばさきもん):柱取替え、控柱・貫取替え
○櫟門(くぬぎもん):柱取替え、控柱・貫取替え
○南門(みなみもん):控柱・貫取替え
その他です。
 露地門は、屋根の破風・淀、腕木は既設のもの生かし解体の他は、全面解体です。
 芝前門、櫟門は、腕木、桁、棟木そして屋根本体は既設のままですから、屋根部をジャッキアップして櫟材の柱(末口6寸もの)を建て、枘落としとなります。全くの逆工程で向こう合わせの工事です。ご存知のように、櫟材は桧や杉と違って真っ直ぐなものではありません。ゴツゴツした木肌で微妙に曲がっていますから、縦墨や通り芯の墨を付けて慎重に施工します。
 門という名の通り、それらは、園路つまり通路に建っていますから、来園者のための仮設の通路を造ったり迂回路を表示したりと関連工事が伴います。
 南門は、池の近くに建っていますので、5、60センチほど掘ると水が湧いてきますから、水中ポンプを稼働させながらの作業で苦労しました。
 工期は来月の20日まで。これは、観梅シーズンの前には完了させるという毎年の決まりです。
 関係者に聞きましたら、今年は例年になく梅の開花が遅れているとのことでした。去年も、偕楽園の梅の花が満開になったのは、桜の開花と重なりましたから、2年続けて遅れ気味だそうです。それだけ、気温が低いということですね、表での作業は堪えます。(トホホ)
 もうひと頑張り、職人さんたちも頑張ってくれています。
 工事の模様は、去年、大風呂敷を広げてしまい尻つぼみになってしまいましたので、この辺で。面白い写真がありましたら追々と・・・。
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2012年03月13日

好文亭他復旧工事その7

 DSCF4894.JPG 話は前後しますが、今回、好文亭の黄土砂壁の復旧工事に使用した黄土砂採取には、エピソードがあります。
 黄土砂は、以前は偕楽園の南崖から細々と採取していたのですが、園の整備が進められて階段状の土留め柵が設けられたために、それが不可能になってしまいました。従って、設計監理者も施工業者も、修繕工事のたびに、黄土砂の確保には苦労していました。
 昨年の6月のある日、打合せのために水戸に向かっていた伊藤平左衛門建築事務所のNさんが、水戸駅到着が近いという車内アナウンスに降りる準備をして、ふと車窓から外を見ると、崖崩れしてむき出しになっている地層が目に入ったのだそうです。先の大地震で、県営釜神アパートの南崖が大きく崩落していたのです。
 朝日に光る黄色い土、それをみたNさん、これはひょっとして使えるな・・・、と思い、さっそく、知り合いの左官職のIさんに連絡をして現地調査をしてみると、これがドンぴしゃり、成分といい色合いといい好文亭に使われている黄土砂そのもの、という診断。文化財なども手広く手がけているIさんの確かな目を信じて、崩落した崖から土を採取することにしました。
 カラカラと小石が落ちてくる崖の下で、余震に注意をしながら黄土砂採取が始まりました。
 思い出してもびくびくものです。また、この日は暑かった、35度を超える猛暑日でした。(続く) 
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2012年02月27日

好文亭他復旧工事その6

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 竹割り器は、このように使います。
 Yさんは、アラサーティーの女性です。左官職は憧れの職業だそうで、土でも道具類でも、一輪車でも、男性に負けずに軽がると運び、脚立の上にも乗って仕事をします。経験は5年ほど、筋がいいのでしょうか、もう仕上げコテも自在に扱っています。勤めている左官屋さんが、文化財級の仕事も手がけていられるので、いろいろ経験できて、毎日が楽しく充実していると、笑顔で話していました。
 さて、割られた竹は、一本一本丁寧に節を払い仕上げられます。幅は21〜24センチ、尺貫法でいう7分から8分ほどです。
 これを、縦横に組んでゆきます。この作業を、「小舞を掻く」といいます。まず、尺間(約30センチ間隔)に組むのが間渡竹(まわたしだけ)といい、上部は桁に、左右は柱に小穴を突いて差し込みます。下方の土台などには拘束しません。それは、土の重さで壁が下がったときに、はらまないようにするためです。いってみれば、これが竹小舞(たけこまい)の親骨です。
 地味な仕事が続きますが、今回はこれにて。
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2012年02月17日

好文亭他復旧工事その5

DSCF5077.JPG 復旧工事は2月6日の検査で終了しました。7日から、式典の後に一般に公開されており連日大変な賑わいのようです。好文亭は偕楽園のシンボル的な存在ですから、皆さんお待ちかねだったのでしょう。
 工事写真は、通常、「施工前」、「作業状況」、そして「完了」と、工事毎に大きく分けると三段階で必要箇所を撮影しますが、今回は、伝統的な工法の工事もありましたので、逐次、その過程を記録する必要もあって総数4000枚近くになってしまいました。それを2000枚ほどピックアップ・編集して、「工事写真帳」を作りました。正直、最終段階では、見るのがいやになるほど写真に埋もれた感じでしたけれど、なんとか納品して、今は放心状態です。
 そのなかから、追々ご紹介できればと思います、お付き合いください。
 前回、お見せした歯車のような冶具は、竹割り器です。太さ径7〜8センチの真竹を、6〜8等分して一気に割る優れものです。
 概ね20〜24ミリに割られた竹を壁の下地として編んでゆく作業が「小舞掻き」です。その模様は次回のこと、今回はこれにて・・・。
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2011年12月11日

好文亭他復旧工事その4

PA040663 (450x287).jpg PA040664.JPG PA040673.JPG PA110785.JPG PA060678.JPG
 ずいぶんご無沙汰しました。
 その後、復旧工事は順調に進んでいます。今年は、あわせて定期的な修繕工事も平行して進められていますので、あわただしい毎日です。
 復旧工事は震災対応でその主なものは、好文亭の黄土砂壁の復旧、和紙貼り壁の復旧、園内の各所トイレの屋根瓦や面戸漆喰の修繕などです。
 一方、修繕工事は、好文亭奥御殿板の間、廊下、板の間の広間である西塗縁などの摺漆(拭漆)、黒塀の屋根の修繕、入場門の門柱や扉の取替え工事、三つある井戸屋形のうちの一つを改築、廊下縁板の取替えなどなど、盛り沢山です。
 左から順に説明します。
 好文亭玄関の右手にある楽寿楼の1階部分、北面の壁です。崩落して傷んだところを掻き落して部分補修します。竹小舞が見えているところには、荒壁を付け、順次、中付け、中塗り、上塗りと進めます。その模様は後日。
 亭内の壁補修は、やはり既存の傷んだところの掻き落しから始めます。ほぼ全面に、床保護のクッション材を敷き、さらにブルーシートで被って作業します。養生、作業、清掃の繰り返しです。
 へらを使って、既存の上塗りである黄土砂を丁寧に掻き落します。その際、下地の土と混じってしまっては、上塗りに再利用できませんから、慎重な作業が要求されます。
 荒壁まで傷んでしまったところは、荒壁まで掻き落します。ゴミや不純物を取り除いたあと、新規に追加した荒木田土とよく混ぜ合せます。左官工事とは、手順を踏まないと次へ進めない「生もの」を扱う仕事だと言うことが分かります。
 この冶具は、さて何でしょうか。ヒント:奥に見えているのは、竹小舞に使う、真竹です。
 
 次回をお楽しみに、本日はこれにて。
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2011年10月23日

好文亭他復旧工事その3

DSCF5013.JPG 先日ご紹介した、好文亭の茶室、何陋庵の内部、解体前の写真です(解体後のものと見比べてみてください)。写真では、傷み具合がはっきりしませんが、下地窓の周囲をはじめ柱や天井回り縁など木部との取り合いのところなど壁一面に、亀裂や肌割れ、散切れ(ちりぎれ)があって、痛々しい限りです。
 付箋は、施工管理のために貼ったもので、壁のNo.、施工ランクを表示しています。「A」は、剥落してしまったところや仕上げ材を掻き落して下塗まで解体するところ、場合によっては竹小舞まで遣り替えるところなど、傷みのもっとも激しいところを表します。「B」は、中塗(なかぬり)から、場合によっては中付け(ちゅうづけ)まで塗り替えるところ、「C」は、ヘアークラックや軽微な散切れを直すために上塗りだけを直すところと、区分しています。
 表面から見ては軽微な傷みでも、上塗りを掻き落して見ると下塗りや小舞まで傷んでいるところが多いため、設計と実施を順次管理し記録しなければなりません。数が多いため、苦労の多い作業が続きます。(続く)
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2011年10月04日

好文亭他復旧工事その2

P9140535.JPG 先日ご紹介した、好文亭にある茶室、何陋庵の西側の壁の傷んだところを撤去しました。下地窓を残して丸裸のように木摺り下地が見えています。普通、壁の下地には半貫(杉板、W=90mm、D=12mm)を使いますが、ここでは、W=32mm、D=6mmの極薄物を、縦横斜めと、見事に使い分けています。これを内外入れ違いに、つまり交差するように取り付けています。したがって、壁の下地としては、6mm+6mm、わずかに12mmという薄さです。これを、間口、天地とも9尺のところに使っていますので、手で触れるだけで、ふわふわ動きます。茶室つまり数寄屋造りの粋、と言うところでしょうが、さすがに千年に一度と言われる震災には勝てませんでした。

P9280605.JPG 室内から見ると、陽を透かして見事な造形美が見られます。ここに夕陽が当たると、不思議な雰囲気が漂います。工事中の今しか見られない、眼福といえましょうか。
 黄土壁の修復も、着々と進んでいます。その模様は、追々のこととして、本日はこれにて。
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2011年09月27日

好文亭他復旧工事その1

何陋庵 4-6 (450x297) (3).jpg 東日本大震災で被害を受けた、水戸市偕楽園内の好文亭の復旧工事が始まりました。東北三県や本県の震災の被害の大きさ、深刻さを思うと、個人的には内心忸怩たる思いがないではないけれど、これも仕事と割り切って、順次、復旧工事の実際をご紹介して参ります。
 写真は、好文亭の何陋庵(かろうあん)という茶室の西側の壁の状況です。下地窓の周囲、壁一面に亀裂が走っています。下地窓に掛けられていた掛け雨戸が震動により落下しているなど、現場は、写真で見るよりももっと惨憺たる有様ですが、それは追々。(斜めに見えるのは、壁の中央、下地窓に掛かるように取り付けられていた、力竹です。意匠と壁の補強とを兼ね備えたもので、径2寸(約6センチ)の真竹です。上下、梁と地腹幅木に、貝折釘でとめられていましたが、これも見事に、吹き飛んでいました。)
 好文亭の塗り壁は室内外とも、もともと園内で取れた黄土砂を仕上げ材として使っています。古くなると、さらさらと表面の土が落ちてくるほど、繊細な土壁です。その辺の苦労話も追々。
 本日は、これにて。
 
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2009年04月17日

偕楽園公園修繕工事H20 - その6

 平屋で90坪、築35年の民家のプレゼン用の図面に懸かりっきりで、げっそり。先輩の不動産屋氏にやっと手渡すことが出来たところ。
 その間に、梅の花が散り桜が葉桜となり、ツツジや藤の季節。
 遅ればせながら、漆工事の最終段階をご紹介します。

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 4回目の塗作業中。最初にお話したように、この段階では、出入り禁止のため、すべて職人さんにお任せ。

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 最終、5回目の作業が完了して、見違えるように仕上がりました。

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 同じ塗縁の西広縁も傷みがひどいため、早めの工事が必要でしょう。
 こうして、年々歳々、修繕工事は続きます。

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 次回の工事日記では、奥御殿の茅葺工事の模様をお伝えする予定です。

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2009年03月09日

偕楽園公園修繕工事H20 - その6


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 いよいよ漆塗の工程に入りました。
 雨戸は締め切り、部外者(我々工事関係者も含めて)は立入り禁止です。従って、残念ながら詳細は不明ですが、漆工の職人さんから聞き取りした範囲でお伝えしましょう。
 今回は、生漆の早口と遅口を適宜使用しました。硬化の早いものと普通のものを言うそうです。漆は、採取地や季節によって夫々性質が異なり、まさに、いきもの、施工時の気象状況にも大きく左右されます。

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 丁寧に刷毛塗したものを、床板に馴染ませながらひたすら拭き取ります。拭き取りには、晒しの布を使いました。刷毛の抜け毛や、布の糸屑はご法度ですから、いずれの工程も神経を使います。
 それにしても、職人さんたちは、締め切った中で黙々と作業を進めています。
 漆は、乾燥するのではなく、空気中の湿気と反応して硬化するのだそうで、従って温度と湿度の管理が大切になります。
 風を通すと、表面に硬化膜が出来てしまい、内部が硬化せずに全体的に硬化が遅くなり、何よりも表面の仕上がりに影響が出て来るそうです。
 頼りは、投光器のみ。休み時間にちょっと覗かせてもらいましたが、息が出来ない位の異臭で、一分もせずに逃げ帰ってきました。この作業を、最低、5回繰り返します。
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2009年02月19日

偕楽園公園修繕工事H20 - その5

 着色の前に、もう一工程ありました

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 最初に言いましたように、漆は下地に油脂分があると上手く馴染みません。長年、多くのお客さんが歩いたところですから、見た目以上に付着しているのだそうで、ここで、アルコール拭きの工程が入ります。


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 松煙を柿渋で溶いたものを、丁寧に塗ってゆきます。
 ここまで、3人で1週間ほどかかっています。
 全部塗り終わったら、1、2日、乾燥させます。そして、同じ工程を繰り返します。2回目の着色作業は、1回目の上に色を乗せてゆくので簡単そうに見えますが、部分的に色むらが出ていないかどうか確認しながら進めなくてはなりませんし、次はいよいよ漆作業になりますから、慎重に進めます。
 ここまでは、雨戸が開いていましたし、匂いもさほどではなかったのですが・・・。
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2009年02月14日

偕楽園公園修繕工事H20 - その4

 入念に「肌ならし」を終えた後は、研磨した微粉末を固絞りの雑巾で丁寧に拭き取り、乾燥させます。
 そして、着色です。
 漆黒という言葉の通り、真っ黒にするには、松煙を使います。松煙とは読んで字の如く、松を燻した煙、煤です。
 床板は、一枚一枚、木肌が違います。目(木理)の粗いもの、目のつんだもの、柾目のもの、虎班状に目の込んだものなど色々です。つまり、夫々に色の吸い込み具合が違うのです。

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 試し塗をして、色の調子、吸い込み具合を慎重に確認します。
 スリッパを履いていますが、これは、前に触れましたように漆が人体からの汗や油脂分を嫌うからで、裏底がスポンジ状のものを使います。
 手前の一本溝(養生シートで見えにくいですね、前回の記事の1枚目の写真の右端に見える部分です。白く見えるのは、※埋樫です)は、雨戸用の一筋、その次に見えるのが、障子用の、敷居です。敷居の外側まで塗下げます。

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 松煙は柿渋で溶き、刷毛塗・拭き取り、刷毛塗・拭き取りを2回繰り返し、色むらを調整しながら塗り進めます。
 次回は、着色完了の様子を見ます。
※埋樫:一筋は、大きな松材です。毎日、雨戸(20枚ほどになります)を開け閉めしますので、溝が減ってしまいます。一筋は構造材ですので傷んだからと言って、簡単に交換することができません。そこで、溝の底が減らないように、堅い木、ここでは白樫の木(厚みは9〜12ミリ)を埋め込んでいます。埋樫は、15年は優に持ちます。
飛騨高山の陣屋では、鉄板が使われていてビックリしたのを覚えています。
 
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2009年02月12日

偕楽園公園修繕工事H20 - その3

 今回の東塗縁の修繕は、拭き漆工法で行ないました。
 以下、詳細をお伝えしようと張り切っていたのですが、困ったことに、漆は恐ろしい(?)材料で、硬化するまでは、近寄ることが出来ません。(当方の叔母のひとりは、「うるし」と聞いただけで全身に発疹が出来てしまう程でした)。
 従って、作業現場は、漆塗が始まると、お客さんは勿論、工事関係者も立ち入り禁止です。もっとも、それは、「かぶれ」に対する措置とばかりではなく、漆の特性、漆工の禁忌によるものです。
 先ず、埃、油脂成分を嫌います。また、直射日光が当ったり、風を当ててもいけません。極端な乾湿の変化も防がなければなりません。
 というわけで、工事写真の撮影も、工程管理もすべて、「シェフにお任せ」でした。悪しからず。
 さて、拭き漆の基本は、木地の仕上げです。本来なら、今までの斑に残っている漆をすべて綺麗に取り除かなくてはなりませんが、今回は床板の傷み具合、経年の変化(冬目が起って、いわゆる浮造り状態になっている)を考慮して、下地を均す程度に抑えました。

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 粗めのものから極細のものまで、数種類のサンドペーパーを使って、ひたすら、床板を研磨してゆきます。我々は、「下地処理」などと、不粋な業界用語を使いますが、漆工の職人さんたちは、「肌ならし」と言っていました。いい言葉ですね。

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 次回は、着色の作業です。
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2009年02月07日

偕楽園公園修繕工事H20 - その2

 好文亭には、東西二間の板の間がある。烈公(徳川斉昭)御座所を挟んで、東に東塗縁、西に西広縁、どちらも、松板敷の板の間。東塗縁は約10坪、西広縁はおよそ倍の20坪の広さ。
 東塗縁の案内板によると、「この塗縁の間は烈公が80歳以上の家臣、90歳以上の老人を時々招き、慰安したり家臣と共に、作歌作詩などしてたのしんだところです」とある。
 で、今回は、その床の漆塗工事を紹介します。
 まずは、現況からご覧下さい。

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 漆は、湿気には強いけれど紫外線には弱いのだそうで、なるほど縁の東側や南側の日当たりの良いところは、地肌が見えるほど傷んでいます。大勢の観光客が、庭園を眺めるために佇むところでもあります。

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 次回からは、拭き漆の工程を見てもらいます。

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2008年09月17日

偕楽園公園修繕工事H20

 
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 今年も、偕楽園の修繕工事を担当することになりました。
 今年は11月1日から9日まで、茨城県内各市町村を会場に、国民文化祭が催されます。従って何時もの年より、遠来のお客さんの数も増えそうなので、その間工事を中断するなど、変則工程になります。
 工期は、来年2月、梅まつりが始まる前まで。
 
 工事の内容は、次の通りです。
○好文亭東塗縁:床漆塗り
○奥御殿:茅葺屋根一部葺き替え、一部挿し茅
○井戸屋形屋根修繕
○御成門:親柱取替え他
○その他

 今年は、寒い季節の左官工事がありませんので助かります。
 設計監理は、伊藤平左衛門建築設計事務所さんです。
 珍しい仕事もありますので、追々ご紹介させていただきます。
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2008年03月06日

好文亭修繕工事日記(その6)


好文亭修繕工事 こけら葺 020.jpg  軒先から葺き始めて、屋根の半分ほどのところまできました。
 職人さんたちが坐っているのは、手製の椅子?で、屋根の勾配(好文亭は一寸五分勾配)に合わせて作られています。屋根とお尻の間に入れるので「中いれ」と呼んでいるそうです。
 椅子の下側には、屋根板をいためない程度に滑り止め用の釘が打ってあります。
 
好文亭修繕工事 こけら葺 017.jpg 柿葺の難しいところ、蛤葺(はまぐりぶき)といわれる寄棟の部分を葺いています。
 扇形に加工された葺き板を、葺き足の形状を整えながら丁寧に葺いて行きます。屋根金がブレて撮れているのは、それだけ手早く竹釘が打たれている証拠で、ピンボケではありませんので為念。
 
1月16日 009.jpg 蛤葺は葺き上がると光線の具合でグラデーション現象に見えるほどです。
 柿葺でも最も美しい仕上がりが見られるところです。
 
 今年は、偕楽園の梅の開花は遅れ気味、15日前後が見頃だそうです。それでも、連日大変な人出で園内は大賑わいです。
 日曜日には、石州流、表・裏千家など茶道の4派連合の野点が行われるなど、催しものも盛り沢山です。 花に劣らぬ和服姿の競演も、え、え、それはそれはお美しいですぞ。
 皆様方、是非お出かけ下さい。では、また。
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2008年03月03日

好文亭修繕工事日記(その5)

 
好文亭修繕工事 こけら葺 022.jpg 他の屋根工事と同じく、柿葺も軒先から棟へと葺き上げて行きます。
 写真では見えませんが、軒付積板(軒先を形作る板)の上に水切り銅版(厚0.35)を敷き込み、その上に上目板(椹2分板、赤味、手割り板)を葺いて、順次、柿板を葺いて行きます。
 葺き足(葺き板をずらす長さ)は一寸、3a強です。
 
好文亭修繕工事 こけら葺 016.jpg 職人さんが手にしているのは、屋根職が使う独特の形をした金鎚で、彼らが屋根金(やねかな)と呼んでいるものです。
好文亭修繕工事 こけら葺 024.jpg 口に咥えた竹釘(長さ一寸)を、親指と人差し指で摘まんで、握り拳の中ほどにある伏金(ふせがね)でチョン打ちして柿板に打ち付け、続いて頭の部分で打ち込みます。

DSC03612.JPG 竹釘は、打ち込む片方のみ、皮を残して削ぎ切りしてあります。(この竹釘、兵庫県丹波の業者が全国で唯一軒、製造しているものだそうです。)
 それを、ヒョイヒョイと口から出しては指で摘まんで、実にリズミカルに打って行きます。熟練の技に見惚れてしまいます。
 屋根金の柄は樫の木。最上物はグミの木だそうで、柔らかく粘りが強いといいます。だから、大工さんが使う手斧(ちょうな)の柄もグミの木が多く使われているそうです。
 握り部分は、自分の手に合った形に加工して使うとのこと。
 次回は、葺き作業の実際を紹介します。
追記:写真は何れもクリックしてご覧下さい。
posted by vino at 17:21| Comment(0) | 修繕工事日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする